クリーニング用薬品の性質と用途について
酸 類
1,塩酸 (塩化水素)
無色〜淡黄色の刺激臭のある発煙性の液体。うすい液でも強酸性で腐食性。
シミ抜きでは滅多に用いられないが、
尿素、フェノール樹脂を除去するのに使われる事もある。(2〜3%)
腐食性の強い酸であるので濃いものは全て繊維を侵し、多くの染料を流す。
稀釈時は風通しのよい所で、金属容器をさけ、こぼさないように注意する事。
10%以上は医薬用外劇物。 PH 1,6
2,オレイン酸
淡黄褐色の特異な臭気の粘性液体。水に不溶。アルコール類、ベンジンに可溶。
シミ抜き剤の潤滑油に使用。汚点の広がりを防ぐ。ベンジンソープのベース。
繊維に対して影響はないが、本品が残留すると、
酸化して除去困難なシミやカビ発生の原因になる事があるので、
ガンなどで十分に除去する事。
牛脂、オリーブ油の脂肪酸。 PH 4,4
3,ギ酸
無色の刺激臭のある発煙性の液体。腐食性を有する。市販品は80%の濃度。
水、アルコールに溶ける。酢酸より強力で還元性がある。
染料の色なき、変色を補正するのに使用したり、
アルカリを中和しアルカリで傷められた色を元に戻すのに用いる。
一般に使用濃度は10%以下で、濃いものは全ての繊維、
特に合成繊維に損傷を与え、染料を溶かし出す。
酸に弱い合成繊維には使用不可(アセテート、ビニロン、ナイロン)
引火性、危険物第4類第2石油類。PH 2,7
4,酢酸 (99%以上は氷酢酸)
無色の強い酸を有する液体で揮発性。氷酢酸は冬季凍結する。
水、アルコールに溶ける。
色止め、シミ抜きその他で使用するアルカリの中和、
又酸を必要とする汚点抜きに他の薬品と混合してタンニン、インク、香水等の汚点抜き剤、
アルカリによる変色の補正など、クリーニングでは使用範囲が広い。
濃いものはアセテート、ナイロンを溶解する。
28%以下のものは安全であるが、塩基性染料は注意が必要。
引火性、危険物第4類第2石油類。PH 3,3
5,シュウ酸
無色の針状結晶、微粉末は鼻を刺激する。温湯、アルコールに可溶。水の難溶。
強い酸に属し腐食性を有する。還元漂白剤。中和剤。
鉄サビ、インクのシミ抜き、又軽い黄変除去に使用。
カマン(過万ガン酸カリ)戻し、酸化鉄除去にも使用される。
濃度の濃いものは大抵の繊維に損傷を与え、染料を溶かし出す。
10%以下で使用し、使用後は繊維上に残さないように充分に水又は温湯で濯ぎ出す事。
残留物があると水分だけ蒸発して結局は濃度の濃い物が付いたのと同じになる。
10%以上のものは、医薬用外劇物。 PH 1,6
6,酒石酸 クエン酸
両方とも、無色の結晶で酸味がする。水、アルコールに可溶。
酢酸と同程度の酸性を呈するが腐食性はない。
サビ、汗などのシミに、又アルカリの中和剤として使用。
繊維に対しては影響はないが、塩基性染料を流す。PH 3
7,ステアリン酸
白色の光沢のある結晶塊あるいは、パラフィン様固形、水に不溶。
アルコール、ベンゼン、石油溶剤に溶ける。
溶剤に溶かし、オレイン酸同様の使い方をする。
ベンジンソープのベースとして、オレイン酸の代わりに用いると
経時変化の少ないベンジンソープができる。
使用後は残留しないようにする。カビの原因となることがある。
8,乳酸
無色の粘性のある液体で酸味を有する。水、アルコールに可溶。
タンニン、インクのシミに用いる。
濃い液はアセテートを損傷し塩基性染料を溶かし出す。PH 3
9,弗化水素酸(弗酸)
無色の刺激臭のある、発煙性の液体で、強い腐食性を有する。水に可溶。
ガラス質の物(ケイ酸を含む物)を溶かすので容器はガラス製のものは使えない。
鉄サビ、その他の金属性シミ及び鉄分を含んだインク、汗ジミなどの除去。
シュウ酸に比べて後処理が簡単で使い良いものであるが、
濃いものは全ての繊維を浸し、塩基性染料を流す。
市販品は50〜55%で10%以下で使用。
ナイロン地は稀釈していても浸されやすいので注意。
医薬用外劇物。 PH 2,3
10,硫酸
無色の非常に重い粘性の液体。吸湿性が強く、水にあうと強く発熱する。
不揮発性で、非常に強い腐食性を有する。
色抜き、カビなどの除去にサラシ粉と併用して使用。ガスは有毒要注意。
ランドリーのアルカリ中和剤として以前用いられたが、
完全に硫黄分が抜けきれないと空気中の水分を吸ってまた硫酸になり、
繊維に損傷を与えたり、塩基性染料を流すので最近はあまり使用されない。
10%以上、 医薬用外劇物。 PH 2