クリーニング用薬品の性質と用途について
漂白剤
1,亜塩素酸ナトリウム (塩素系酸化漂白剤)
商品名(シルブライト、カーリット)白色粉末、液体もある。水によく溶ける。
酸を加えると、二酸化塩素を発生し、強い酸化作用を呈する。
大体の使用量は水100に対して本品0,3と30%酢酸0,3の液に漬け込み、
蓋付の容器中で85℃で1時間以上浸漬後水洗いする。
色物は色がとぶ恐れがあるので使用できない。
脱塩素は、ハイドロ0,3%液に漬け込んでする。
酸化漂白剤の中では比較的作用が暖慢であるので、
ナイロン、ビニロン等他の漂白剤が使えない物の漂白に用いる。
ゴミや可燃物が混入すると衝撃により爆発することがある。
又直射日光、紫外線により二酸化塩素を発生し、10%以上になると爆発することがある。
ガスは有毒。準危険物。PH 8
安定化二酸化塩素液は5%で安定させたものである。
2,次亜塩素酸カルシウム (塩素系酸化漂白剤)
別名(高度カルキ)白〜類白色の粉末か顆粒状、水に溶け、アルカリ性を示す。
有効塩素含有量は60%以上。
塩素系の代表かつ歴史的な漂白剤であるが、硬度成分であるカルシウムを含むので
石鹸と同時に使用できない為、現在はあまり使用されないが、
カビ等の除去に酢酸を少量加えて使用する。
水、プールの殺菌剤に使用。 PH 11,8
3,次亜塩素酸ナトリウム (塩素系酸化漂白剤)
別名(次亜塩素酸ソーダ)純粋な物は無色の結晶で、化学的に不安定なために
市販品は1〜13%程度の水溶液にしている。
他に水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、塩化ナトリウム等が混在しているので、
PHは12前後のアルカリ性。次亜塩素酸ナトリウムはそのPHにより反応が異なる。
PHの低い時(酸性)には塩素ガスが発生する。塩素ガス自体、強い酸化力を持っているので
漂白効果は上がるが、同時に素材を強く傷めるのでクリーニングでの漂白としては不適当である。
PHが高い時(アルカリ性)は安定になるが、日光や加熱により分解し、酸素を出し漂白効果を呈する。
以上のように漂白する場合はPHを高く(石鹸水程度、PH10〜11)して温度(50〜70℃)を
かけてやる必要がある。低温でも徐々に分解するが漂白時間が長くなる。
使用法は、
有効塩素が0,03〜0,06%(300ppm〜600ppm)(6%物で大体100〜200倍)になるように用いる。
硬度分を含まないので、石鹸と併用出来、洗いと同時に使用できる。
酸化力が強いので、主に植物性繊維(綿、麻)の白物に用いる。
柄物や動物性繊維(毛、絹)には用いない。
合成繊維(ナイロン、ビニロン以外)にも使用可能であるが、樹脂加工した物はその樹脂に
塩素ガスが吸着されて黄変することがある。
黄変は、ハイポ、ハイドロ等に脱塩素剤で処理(0,3%液に10〜30分間浸漬)すると元に戻る。
4,ジクロロイソシアヌール酸ナトリウム (塩素系酸化漂白剤)
別名(塩素化イソシアヌール酸)白色の結晶で顆粒状と粉末がある。
有効塩素は60%で水に可溶。
水に分解すると、加水分解して次亜塩素を遊離し、漂白、殺菌効果を示す。
硬度分を含まないので、石鹸と併用出来、又PHは、中性に近い弱酸性(PH6,2〜6,8)であるため、
高温、高濃度で処理しても、繊維の強度低下がほとんどなく、
又使用量も有効塩素濃度300ppmとして、
水役100gに50gで次亜塩素酸ソーダの約5分の1ですむので
次亜塩素の代替品として注目されている。
5,過酸化水素 (酸素系酸化漂白剤)
別名(オキシドール)純粋なものは粘性ある青色をおびた液体で酸性。
PH 6。市販品は3〜35%で濃厚な物は皮膚に付くと皮膚を浸しピリピリとした痛みを感じる。
分解して発生機の酸素を出し漂白作用を呈する。
分解は、高温になるほど、又アルカリ性が強まるほど促進される。
使用法は0,3%(35%のもので100〜200倍)になる様に用い、
40〜50℃でアルカリ剤を添加して弱いアルカリ性で行う。ナイロンには要注意。
塩素系漂白剤の使えない動物性繊維あるいは柄物に用いるが、
温度を上げたりすると縮みを生じたり、柄がとんだりする。ナイロン繊維は使用不可。
シミ抜きには、コーヒー、チョコレート、ココア等に用いたり、黄変抜き、
又アイロンによる軽度の焼き焦がしの復元等に用いられる。
金属、特に鉄、銅、クロム、マンガン等により、急速に分解する性質がある。
染料の中でも含金染料と呼ばれるものや、染色に際して、金属塩処理を行った物は、
漂白中にその染料部分だけが強く分解が起こり、素材が強度に酸化を受け脆化したり、
ボロボロになったりする。
含金染料、金属処理は大体において色が鮮明で原色使用が多く要注意。
6%以上、医薬用外劇物。
過酸化水素とアルカリ剤を使った主な黄変抜き方法。
1) 炭酸マグネシウム(又はソーダ灰)と過酸化水素3〜7%をトロトロ程度に混合し、
黄変ジミにつけて日光又は薄いシミなら室内常温で放置することにより作用させる。
2) ドライヤーかコテで加熱しつつ、過酸化水素3%をシミの部分につけ
2〜3回に1度の割合位でアンモニア水(40〜50倍稀釈)をつける。
この方法は、薄いシミのみに使用する。
色とびの危険は少ないが時間が掛かる。後処理は水での濯ぎは不必要。
3) 絹に白裏地又は表地の全体に黄変ジミや赤カビの発生したものに、
高級アルコール洗剤少々、硅酸ソーダ又はメタ硅を少々混合したものに
過酸化水素を加え加熱する。
4) 過酸化水素3〜7%位を噴霧器で広範囲にに発生した黄変に、
スプレーすることによりシミ抜きをする。
6,過ホウ酸ナトリウム 過炭酸ナトリウム (酸素系酸化漂白剤)
別名(過ホウ酸ソーダ) (過炭酸ソーダ)
過酸化水素をホウ砂に結晶水として抱かせた物が過ホウ酸ソーダ、
炭酸ソーダに抱かせた物が過炭酸ソーダである。
白〜類白色の結晶性粉末あるいは、顆粒状で水に溶けやすい。
水に溶けるとアルカリ性(PH9,6〜10)を呈し、
温度をかけると過酸化水素を遊離して分解する。
作用は過酸化水素と同様であるが、構成成分中にホウ砂、炭酸ソーダが含まれているので、
アルカリ剤を加えなくても過酸化水素は適度に分解し漂白作用を呈する。
大体の使用量は25sワッシャーで60〜80g洗剤を加えて、過ホウ酸ナトリウムは
50℃以上の高温で、過炭酸ナトリウムは30〜50℃程度で使用する。
あらゆる繊維に安全であるが、過ホウ酸ソーダは高温で使用するので酸性染料に要注意。
又過酸化水素同様、二品共含金染料には特に注意が必要。
7,過マンガン酸カリウム (酸素系酸化漂白剤)
別名(過万酸、過万ボツ)暗紫色の光沢ある結晶で、水に溶けて濃い赤紫色の液となる。
水には約6%溶け、PHは中性7を示す。
使用時には必ず中性で使用すること。酸性溶液では植物性繊維が浸される。
あらゆる繊維にに使用出来、比較的染料にも安全であるが酸性染料や直接染料の
青系統のものは浸されやすいので色柄物はテストして使用のこと。危険物第一類。
使用方法
◎シミ抜きの場合シミの部分を湿らせ、その上から過万酸水溶液(1〜2%)を塗布し、
5分〜10分位放置する。全体を浸漬する場合、過万酸水溶液(0,3〜0,5%)に
10分〜20分位放置する。
◎シミの程度、地色などを考慮にいれ濃度を決める。水溶液を作る時固形物が
残らないように温湯で溶くとよい。固形物は繊維を傷つける。
◎塗布後、シミの部分は茶褐色(二酸化マンガン)になっているので、
除去するため還元剤を使用する。
◎還元剤は、酸性亜硫酸ソーダ、シュウ酸、ハイドロを水か温湯に(0,3〜0,5%)
溶かして使用。過万酸もどしが出来にくい場合は、熱を加えると安易にもどる。
◎化繊の場合は過万酸もどしは普通の場合の比べて2〜3倍の時間が掛かるため、
完全に過万酸もどしは出来ていないのに黄変ジミの残留と思い違いをしない事。
◎酸性亜硫酸ソーダ、ハイドロ等を茶褐色の二酸化マンガンに作用させると、
無色の水溶性化合物に変化するので完全に生地から洗い流すこと。
少しの残留物があると空気にふれて酸化され再び茶褐色が発生する。
◎黄変、赤カビ除去する場合、アルカリ+過酸化水素でする場合が多いが、
除去出来ず残留物のある場合、二次手段として過万ガン酸カリを使用、
時間をかけることにより除去する。
8,亜硫酸水素ナトリウム 無水亜硫酸ナトリウム 次亜硫酸ナトリウム
別名(酸性亜硫酸ソーダ) (無水亜硫ソ) (ハイドロサルファイト)
還元漂白剤
いずれも白色の粉末、又は結晶性の粉末で、水に溶けて酸性亜硫酸ソーダは、弱酸性PH
5
無水亜硫ソは、微アルカリ性PH 8、ハイドロは中性に近い微酸性PH
6,4を示す。
いずれも発生機の水素により、相手色素より酸素を奪って漂白作用を呈する。
還元力の強さは、ハイドロ>無水亜硫ソ>酸性亜硫ソ、である。
使用法はいずれも、0,3〜0,5%程度の液に漬け込み、酢酸を滴加して、
弱い酸性として1〜数時間おく。(加熱すると短縮出来る)
取り出した後絞り、0,5%程度の酢酸液で残留する薬品を充分分解した後水洗する。
水洗が不充分であると反応して出来た亜硫酸が後に酸化されて硫酸となり
繊維を脆化させる原因となる。
綿、麻、毛、合繊等に用いる。絹は増量剤として混入してあるものが黒くなる恐れがあるので
用いない方が無難である。(過万酸もどしに多く使用される)
9,ロンガリット (還元漂白剤)
別名(スルホキシル酸ソーダ)白色の塊、又は粉末で水に溶けて中性に近い微酸性PH6,8。
常温で中性以上のPHでは水溶液は安定であるが、酸性にすると、
スルホキシル酸ホルマリン不可物を生じ、強い還元力を発揮する。
使用法は0,3〜0,5%の液の中に酢酸を滴加して酸性とし、漬け込み加熱する。
構成成分中にホルマリンを含むので、衣類の漂白には用いない方がよい。
10,シュウ酸 (還元漂白剤)
白色の結晶性の粉末、水にやや溶けにくく、温湯にはよく溶ける。強酸性でPH 1,6
酸性なので比較的酸に強い動物性繊維(特に白絹)の白物の鉄サビ、インク等の汚点抜きに、
又過万ガン酸カリもどし、酸化鉄除去にも使用される。
使用後は充分に濯ぎ出しておかないと、経時変化で染色生地が変化するし、
残留物が再び結晶するとき著しい繊維の損傷をきたす。10%以上、医薬用外劇物。
11,チオ硫酸ナトリウム (還元漂白剤)
別名(ハイポ)、無色の結晶で水によく溶ける。
弱い漂白力を持ち、単独ではヨード系の薬品のよるシミの汚点抜きに、
又塩素系漂白剤の脱塩素剤として使用する。
過万酸もどしにも使えるが効果が弱いので、酢酸を加え1〜3%溶液で使用する。